🎤インタビュー🎩


 皆さんに知ってほしい信念を持った魅力的な人物やチームにスポットライトを当てます。

 

第1回2022年2月12日実施

指導者である自分の変化がチームの変化に

大阪府立門真西高校男子バスケットボール部(2022年度より淀川工科高校勤務) 

岡田宝之先生

門真西高校男子バスケットボール部 Instagram

部員20名(選手16名、マネージャー4名)

練習週5日(木、日OFF)

令和3年度(2021年度)インターハイ予選大阪府ベスト16、新人戦中央大会進出

岡田宝之先生

1986年生まれ

大阪府立東住吉工業高等学校(現東住吉総合高等学校)、大阪体育大学出身

 

消防士から世界一周旅行を経て教師へ


ーー岡田先生は教師になる前に消防士をしていたと聞いていますが、なぜ教師の道に進もうと思ったのでしょうか?

岡田先生

そもそも教員になるという目標、夢が先なんです。

そう思って大体大に行きましたし、4回の途中までは教員になると思ってたし、教員採用試験がダメだったので卒業した4月からは講師かなぁと思っていたんですよ。

でも教員採用試験が終わってから卒業までの間に消防の試験があって、受けてみようかなという気持ちで受けたら受かって、新卒では消防士になりました。

消防から教員になりたいと思ったというよりは教員になるにあたって、このタイミングでは消防士になろう。教員は免許があればいつでもなれる!って感じです。

 

ーーはじめに消防士の年数をある程度決めて教員になろうと考えていたんですか?

岡田先生

一時は消防の仕事が楽しくてやりがいもあって、職場に目標にする先輩もいたりして、よっしゃ消防頑張るぞ!って思ってたこともあります。

あ、でもそれ一瞬やったなぁ(笑)。

2年目に消防の中で部署が変わったんですよ。

その環境にうまく馴染めず目標が曖昧になっていったんです。

それとは別に世界一周をしたい夢も出てきて、その夢のために計画を立てるとあと4年で計画を実行できる資金が貯まることがわかって結局6年勤めて退職して、世界一周に行きました。

仕事を辞めていっているので帰国したら無職なので、元々やりたかったし、教員なって、という流れです。

 

ーー1年間の世界旅行を振り返って印象的なことは

岡田先生

すごくいい景色があったり、人に優しくされましたね。

消防士っぽいこと言いますけど、日本で誰かが困ってたら「誰か来てくださーい!」って言わないと日本じゃ人って来ないと思うんですよ。

日本だと「そこの自転車乗ってるメガネのお兄さん!」って具体的に言わないと来ないと思うんですけど、海外だったら呼びかける前に集まってきてくれたりとか、なんか困ってることないかって声かけてきてくれたりとか、言葉も伝わりませんけどなんとか力になるように聞こうとしてくれたりとか、色んな人に優しくしてもらいました。

日本を客観的に見れるようになったのでそこはよかったと思います。

ただ僕らは日本におるだけなんやって。

 

ーー教員採用試験の勉強はいつどのように

岡田先生

旅行前、妻が教員をやっていて、2人とも辞めて旅行に行ってたんですけど、妻から勉強のやり方とかいい参考書などアドバイスを聞きながら、、、実は学生時代全く勉強してなかったので勉強の仕方がわからなくて、こうやってやったらいいんだとか、問題出し合いながらとか。

消防士を退職したのが年度末の3月で旅行に出発したのが4月、帰国したのが翌年2月でした。

2月、3月はゆっくりして4月から講師として支援学校に1年だけ行ってるんですよ。

そこの先生が教員採用試験頑張ってくださいという応援、バックアップ体制をとってくれました。

個室を用意してくれたりとか、夏には同じく教員採用試験を受ける人たちと励まし合って教員採用試験に受かることができました。

 

 

勝つための練習よりもまず部員との関係作り。

そう気付いたことでチームにも変化が


  ーー門真西高校で高校教師としてのキャリアをスタートさせたわけですが、はじめのほうは練習や練習試合もままならなかったとお聞きしています。振り返ってみてチームにどのような変化が起こりましたか?

岡田先生

僕もチームの一員として考えると、変わったのは僕だと思います。

子どもたちは変わってないですね。

赴任したときは指導することが初めてで「勝ちたい、勝つために」っていう正論を振りかざして、勝つためにはこうしないといけない、っていうのを押し付けてたんですよ。

そうなると、勝ちたいっていうことでしんどい練習やったりとか、精度を求めたりとかに僕がフォーカスしてたんですけど、そこはすごく子どもたちに押し付けてたなって思います。

子どもたちは頑張って勝ちたいという思いはそのときもあったんです。

でも、自分の接し方など全然噛み合っていなくて、部員が辞めていったり人数が少なかったりっていうことはありましたね。

今振り返ってみて、今と比べると、僕も現役のときはプレイしていたのでプレイ観はあるんですけど、やってる本人にしかわからない部分を残しつつ、自分達が納得しながら表現できるかを見守る感じになっています。

ただ、勝てないときは自分のプレイ観とか、本や色んな先生から学んだ指導法をもってアドバイスをするぐらいですかね。

赴任して1〜2年目は子どもたちとの信頼関係もできていませんし、話を聞いても良いかなと思える土壌というか関係を作るべきだったな、ということをわかっていなかったです。

だからめっちゃ悪いことしたなって思ってます。

「すまん俺が悪かった!」って謝ったこともあります(笑)。

練習試合をままならなくしてたのは僕です(笑)。

僕の変わったことを言葉で言うと、僕がやらしてるというより自分達でやっていんだっていう感じをもたせるようになった、ですかね。

僕がやらせるんじゃないんですよ。部員がやる。

それをわかってなかったです。

部員が与えられるのを待ったり、与えてくれるんですよねっていうスタンスだとどこか言葉が入りにくかったり、うまくいかなかったときこちらのせいにしたりするんですよ。

でも、自分達でやるんだってなったときに、届かなかったら自分達が悪かったのかなぁとか、そこでどうしたらいいかっていうのを手助けするつもりではいますけど、まずは自分達でやるんだと。

岡田先生のところにおったら勝たせてくれる、上手くしてくれると部員が思っていると誰も上手くなりませんから、どう思う?とか、どうしたい?とか、じゃあやってみよか、俺はこう思うけどそれは絶対じゃない、参考にしてくれって感じです。

 

ーー勉強と部活動の両立に悩んでいる部員に対してどのように声かけをしていますか?

岡田先生

理解しようとすること、わからないことをわからないままにしないこと、これはバスケットボールにも繋がります。

それと部活動を一生懸命やるように言っています。そうすることによって生活習慣が整って勉強に入りやすくなります。

部活動を辞めて勉強をすると言って辞めた生徒で勉強が良くなるイメージがないです。

 

 

「バスケットボールはみんなのもの」

自分のプレイ観を押し付けず、部員の目標までの道のりをときに見守り、ときに軌道修正する。


 ーー練習を見学したとき、岡田先生は部員にバスケットボールや練習そのものを楽しませながら指導している印象を受けます。普段の指導ではどのようなことを考えながら、部員の指導に当たっていますか?コーチングのベースになる考えや経験などあれば教えてください。

岡田先生

そうですね、「バスケットボールはみんなのもの」やと思うんですよ。

どういうことかというと、指導する側が「バスケットボールっていうのはな」って話し始めると絶対ろくなことがないんですよ。

体育でも思うんですけど、先生が「バスケットボールっていうのはな」とか「それはバスケットボールじゃない」とかそんな話をしてしまうのは押し付けかなと。

その子が一生懸命やってて楽しいならそれはバスケットだと思います。

目標を部員が決めてそこに向かっているかどうかを僕が見ながら、「それやったらいいね👍」とか「そっちいったら君が向かおうとしている目標に行ってない」とか、賛同であったり、軌道修正であったりは言葉でしますが、一生懸命やっているなら否定はしたくないなと思っています。

レベルが高いのもバスケットなんですよ?

バスケットボールっていうのはな、ピックアンドロールしてシールしてダンクするもんや、ではなくて、バッシュがなかったら体育館シューズでもいいし、技術に差があるなら得点を2倍にしてもいいし。

ダブドリOKとか、そうやって工夫しながら、バスケットボールをベースにして楽しめたらなぁと。

その人がバスケットボールと思ったらそれでいいんです。

自分自身の高校時代のバスケットもあれだけがバスケットと思ってないです。

ああいう環境でできたのは幸せやと思ってますけど。  ※岡田先生は高校時代全国大会に出場

あれもバスケット、ぐらいに思ってます。

大阪は男子で220チームくらいありますが、強いチームもバスケットだし、1回戦で負けてしまうチームもバスケットですし、休み時間の遊びもバスケットです。

海外旅行していたときの、リング、ボールも適当で誰が味方かもよくわからない、コートもぐちゃぐちゃ、そういう環境でやるのもバスケットなんです。

「そんなんはバスケットじゃない」とか「バスケットっていうのはな」とか言い出すとダメなので、色んなバスケットがあるなぁ思いながら。

それがベースですかね。

 

ーーコロナ禍で十分な練習時間やミーティングの時間を確保できないこともあると思います。そうしたときに工夫をしていることはどんなことですか?

岡田先生

キャプテンとはよく連絡を取るようにしています。

自分が体育教員であること、それと性格も関係するんですが、色んなバスケットボールの動画、食事、睡眠、体の使い方などの動画やサイトを送って、集まれない間でも目標があるのなら、そこに近づくために今できることをやろうよと部員に発信しています。

NBAのいいプレイや雑誌Tarzanの記事を紹介したり。

強豪チームも自分達も時間は1日24時間平等やから、その時間をどう使おうかと話しています。

興味のある部員はこちらが紹介したサイトからアクセスして勉強していると思います。

NBAの試合を見てどっちが勝ったって言う部員もいるんですけど、そうやって楽しむのもいいけど、それだけで終わったらただの観客になってしまうから、自分たちはプレイヤーとして何か為になるような動画の見方をしようと話しています。

あと、昔のやり方ですけど、漫画のスラムダンクを部員に貸してます。

貸してから返ってこないんですけど(笑)。

 

ーーベスト16に進出するチームのほとんどを私立高校が占める中、令和3年度(2021年度)のインターハイ予選で大阪ベスト16、同新人戦で中央大会進出は公立高校としては非常に価値があると思いますが、その点をどのようにお考えでしょうか?

岡田先生

子どもたちが頑張ってくれたなぁということと、色んな運、組み合わせ、そういった状況も重なって有難いなぁという気持ちが大きいです。

やったったぞっていう気持ちよりも、子どもたちへの感謝があります。

子どもたちの自信にはなったので、そこは価値と言っていいと思います。

3年生が結果を出してくれたので、今の2年生の新チームは大阪ベスト8にいきたいと言っています。

教えた最初の子たちも勝ちたいと思ってたんですけど、具体的にそういうビジョンを持てるようになったのも、この結果のおかげだと思うのでそれは嬉しいことですね。

もちろん組み合わせもあるのでリーグ戦をするとまた結果は変わると思いますが、子どもたちが頑張ってくれて、自信をつけてくれたので活き活きとバスケットしている姿を見られたのがよかったです。

 

 

ご機嫌にいきたい


ーー最後にご自身の教師・指導者としてのビジョンをお聞かせください。

岡田先生

僕はバスケットが好きなので指導者としてはバスケットの楽しさを伝え続けていきたいなと、もっともっと伝えられるような指導者になりたいな思います。

そのためには、勝負の結果、細かいところ、上手くなったという実感を与えてあげないといけないと思うので、そこを求めていきたいと思います。

教員としては、ご機嫌にいきたいですね。

転職もしてしますし、日本を客観的に見たことがあるからかもしれないですけど、教師しかないとか、バスケットしかないとかそういうことはないです。

楽しんで教員もバスケットボールの指導もできたらいいなと思います。

ご機嫌にいきたいなと。

結果に追われたり、やるべきことに追われたりするとよくないかなと思います。

教師がしたくて教師になったのに、教師をすることによってしんどくなったり、バスケットの指導がしたかったのに部活動が忙しくて周囲に迷惑をかけるのは嫌ですし。

家族にも理解してもらっていますし、自分のためにも休みは多いほうがいいですね(笑)。

ご機嫌にいきたいです。

以上